Nepenthes veitchii Bario candy red #1

N.veitchii Bario candy red ネペンテス・ビーチ(ビーチアイ、だそうですが、日本ではビーチですね)
ボルネオ島北部に自生する種で、低地から高山まで広く分布しており、種小名は園芸家James Veitchに由来します。かの有名な(?)19世紀ヨーロッパのビーチ商会の創設者です。
以前、大学の図書館でプラントハンターに関する本(タイトルは失念しました……)を読んだのですが、このビーチ商会がハンターたちにネペンテスの採集を依頼したのがネペン栽培の起源らしいですね。ネペンテスは洋蘭と並んで貴族に愛された高位なものだったとか。東洋からヨーロッパまで植物を枯らさずに運ぶための技術の進歩や、未知の植物にたいする当時の人々の熱意は相当なものがあります。
同じ本に書いてありましたが、属名Nepenthesとは、もともとホメロスの叙事詩オデュッセイアに出てくるエジプトの薬草の名前であり、ギリシア語の言葉でNe(否定の接頭語)+Penthes(悩み)ということから転じて悲哀を忘れさせてくれる「無憂草」を意味します。ネペンテスの奇妙で魅力的な補虫袋が蔓の先から日毎膨らんでいくのを貴族や園芸家は今か今かと待ち続け、やっと壺が出来上がったときには満足感やその形に魅了されてどんな悲しみも一時忘れてしまう、という意味を込めて無憂草と名付けられたのだそうです。
そんなふうにN.veitchiiを眺めていると確かに同じような思いにとらわれるような気がします。
ビーチはいつか栽培したいと思いつつ、個体差があまりに激しくてなかなか手が出ませんでした。個人的に一番重視したいのが丸さで、次に色、ストライプもあったらいいなあ、と思っていて、そんな折に見かけたのがこの株でして、最初色はあまり出ていなくてストライプも気持ちあるかな、という程度でしたが若い株ながらとにかく丸かったので入手しました。やっぱり高いですね……清水の舞台から3回半ほど飛び降りた金額でしたが(この表現から推して量るべしw)、実生由来だし、丸いし、名前もCandy redだし、ということで。
最近になって写真のように赤くて、丸くてストライプも入った袋をつけてくれるようになりまして、あのとき買ってよかったな、とw

もう少し経って完成系の袋です。
名称のCandy redについて、N.veitchiiの色を表すときにこの名が付いている個体があり、袋の色をさしているものと思われますが、なんでCandyなんだと調べたところ、もともとはストライプについて言う語で、ちょうどアイスキャンディのように細やかに入っているものを指すのだそうです。

上と同じ袋、完成から1ヶ月ほど経ったものです。
袋の色がはっきりでるようになってからは赤みも抜けず、むしろ蓋が開いてから少しずつ濃くなっていくようになりました。大きくなるにつれ少しずつ、いわゆるCandyなストライプが出てくれたらな、と思います。

現在の草体はこのような感じ。
直径は30cmくらいですかね。Bario産のものは伸びるほど丸くなるそうなので、どうにか維持していきたいです。さらに丸くなったピッチャーが見たい!
実はこれは購入時から植え替えしてないんですね……。普段は購入して環境に慣れたかなといった時期に植え替えてしまうんですが、N.veitchiiは根を傷めるとまずい、という声を聞きますし、葉が大きくなって順調らしいときに植え替えで水をさすのもな、と。ただ鹿沼細粒にもう1年以上植えてあるのでそれもまずそうですし、そろそろ……12月ぐらいには、と考えています。

コメント

  1. これは良い個体ですね。! ネペンテスの何をもって言い、とするかは、今んところ個人の好みだとは思っておりますが、これはそんな物は関係なくイイネ、です。
    ビーチィは以前はやっぱり高級種でしたが、これは「お高」そうですね。w こんな赤い、丸いビーチィは見たこと無いなぁ。すごいっす。
    こういうのを見ると、うちのは駄ビーチィばっかりだなぁ。

    返信削除
    返信
    1. 買ったときは、うっすらピンクかな……というほどの、殆ど黄色い袋でストライプも全然でしたので、もし売り出されるのが1年遅かったらもっと高くなっていたかもしれません。赤い袋をつけ始めたのは最近2個ぐらいからで本当に僥倖でした。
      これは大切にしなければ、と……。

      削除
  2. これは形も色も見事ですね。
    ネペン系のブログにコメントするときは所詮好みだと思っているので、植物体そのものを誉めるコメントはしないようにしているのですが、これは素直に綺麗だと思わされました。
    いいビーチにめぐり合えたようですね!

    そういや、ちょいと聞きたいのですがビーチは葉の1枚の展開にはどれくらいかかるのでしょうか?
    成長が遅いとはどれくらいなのでしょうか?

    返信削除
    返信
    1. たしかにどんな袋を良しとするかは好みですね。多くの人の琴線にふれる所謂「売れ線」のようなものは何となくあるかもしれないですが。赤くて丸くてストライプはその売れ線かもしれないです。個体差の大きい品種は好みのものに出会えるか本当に運頼みでしかないですね。僕には勿体ないような幸運でした。

      ちょうど一枚2ヶ月のペースです。うちではおよそ50%遮光してそこそこの水遣りで、といった具合なので、高カロリー栽培ができている方のところなどではもっと早く成長するかもしれないですね……。

      削除
  3. 丸さもそうですが赤が抜けないのは貴重で素晴らしいですね。この袋が付いていたら清水の舞台をさらに5回位飛び降りる必要があったでしょう^^;
    ビーチは葉が回らず交互に出るようになってくると突然巨大になって、茎が這って垂れ下がり収集が付かなくなるので仕立て方が難しいネペンですね。自生地風に木に抱きつくようにできれば良いのですが場所を取りますし…。

    返信削除
    返信
    1. 他種のネペンテスと同じように、完成してからちょっと濃くなって落ち着くようです。もしかしたら季節的なものかも、と思うので冬に期待です。

      栽培品で木に登らせているのは見たことないですね……仕立て方としてはやはり理想ですが。今は巨大化するまで栽培できたとしても、可哀想ですが僕の場合は挿し木にしてしまうかもしれないです……(脇芽が出ている前提で)。将来的に屋外温室が持てたら……でもやっぱり僕は栽培環境は整然とさせておきたいタイプの人間ですので挿し木にしてしまうような気がしますw

      削除

コメントを投稿